特定社労士「労働者代理人」の視点

大阪・梅田で「労働紛争解決(あっせん等裁判外紛争解決手続の労働者側代理など)」「就活」「転職」を支援するリクルートグループ出身の特定社会保険労務士が一筆啓上!すべての「働く人」に役立つ知識と知恵をご紹介します。

「内定辞退」のノウハウと「オワハラ(終われハラスメント)」を考える。

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労働問題における新種のハラスメントとして耳目を集めているのが「おわハラ」です。

 

労働市場の需給が逼迫してくると中途採用にも飛び火しそうですが、今のところ主に新卒採用で、自社以外への就職活動を止める様に企業が就活生に求める「終われハラスメント」のことを指していて、

①自社の内定を出す代わりに他社の内定・選考をその場で辞退する様に求めるハラスメント、

②自社内定後、他社の選考に行かせない様にアポイントを入れて拘束するハラスメント、

③内定辞退等を申し入れてきた就活生を辞退しない様に脅すハラスメント、

の大きく分けて3パターンがあるようです。

 

結論から言うと、憲法で「職業選択の自由」が保障されているわけですから、就職活動に制限が加えられることはありません。ですから、少なくとも現在の新卒採用で言うなら「内々定」、「内定通知書」を企業側が正式に出し「内定承諾書」を労働者(就活生)が提出する前の段階であれば、①②③の「おわハラ」に従う必要は全くないわけです。

 

もちろん①の様な場合は、当該会社に入るか否かの選択をその場で迫られるわけですし、拒否すれば当該会社の内定は得られない可能性は高いでしょう。しかし、こういう選択を迫る企業は、入社後も同様にクリティカルな選択を労働者に平然と迫ります。それをよしとして入社するか、御免被るか。そこだけは即断できる様にはしておかないといけないかもしれません。

 

また、①程強烈ではなく、口頭で「他社への活動を止めます」と言えば良いという様なケースは、「わかりました」と答えて、実際には活動しても別に構いません。就活生(労働者)が法律に疎い事をよいことに、「他社への活動を止めます」といった誓約書を取る企業もあるかもしれませんが、そんなものは、法的には何の意味もありません。そういう姑息な手に出る企業に入社しようとは、いくら人気企業であっても、私なら思いませんが(笑)。

 

②に対しては、当該企業の内々定を留保しておきたいなら、応じられる拘束には応じて、上手くかわしながら就活を続けるという対応が良いかもしれません。もちろん内々定を失っても構わない段階になれば、拒否すれば良いだけのことです。

 

③で良く考えられる脅し文句は、「内々定だって労働契約の始まりなんだから、辞退したら損害賠償請求するよ」とか、「君が辞退したら君の出身校からは来年以降採らないよ」という様なものが考えらえれます。しかし辞退の意思が明確なら、これらも気に留める必要はありません。

 

労働契約の始まりを内々定段階とするか、「内定通知書」「内定承諾書」の取り交わされた後の段階とするかは、判例にもよりますが、使用者側の内定取り消しではなく、労働者(就活生)からの内定辞退であれば、書面取り交わし後とみるケースが多いでしょう。また、極論してしまえば、書面取り交わし後の内定辞退の場合は、労働者(就活生)が損害賠償請求される可能性はありますが、その場合でも、採用側に実質的な損害が出ていなければその請求は認められません。

 

もちろん内定辞退はマナーとして、できるだけ書面取り交わし前にしておくべきです。しかし、万一書面取り交わし後の辞退が避けられない場合は、リスクをきちんと把握しながら、冷静な話し合いで解決できる方法を探ることが必要です。

 

但し、いくら書面取り交わし後の辞退が可能であると言っても、入社まで2週間前をきってから内定辞退を申し入れると、杓子定規な法律論で言えば、労働契約の解除される日よりも前に、入社しようと思うもう1社の入社日が到来し、入社できなくなる可能性もあります(辞退する会社が早期の労働契約解除に応じてくれなければですが…)。

 

内定辞退を防止すべく動くのは、企業の人事としては当然の事ですから、それ自体は全く責められるものではありません。しかしそれがあるレベルを超えると「おわハラ」となり、企業の「本性」を明確にする「リトマス試験紙」にもなるわけです。

 

逆に言えば、就活生(労働者)は、外見で判断した単なる「志望順位」に左右されず、この点にも留意して入社を選択すべきかもしれません。会社に対する理解を深め、是非入社して欲しいというスタンスで行われる内定辞退策と、違法や違法スレスレの行為で引き留めようとするのとでは、意味が違います。そこの見極めはとても重要だと思います。仕事は「リアルな日常」であるわけですから。

 

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