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特定社労士「労働者代理人」の視点

大阪・梅田で「労働紛争解決(あっせん等裁判外紛争解決手続の労働者側代理など)」「就活」「転職」を支援するリクルートグループ出身の特定社会保険労務士が一筆啓上!すべての「働く人」に役立つ知識と知恵をご紹介します。

就活生・大学教員・採用担当者必見!大切なのは「新卒一括採用廃止」ではなくて、「“卒業歓迎”企業」を探求し増やすこと。

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一度も雇用された経験のない起業家とか、浮世離れした脳科学者とか、そういうマジョリティとは言えないバックグラウンドの人達が、けたたましく「新卒一括採用廃止論」を唱えているのを最近よく見かけます。

 

それらの方々が主張されるのはもちろん自由なのですが、その主張がロジカルでもなければ、雇用についてあまり勉強もされず、非常に狭い視野でなされているのはとても残念です。

 

ある「新卒一括採用廃止論者」の起業家の主張は、

①いつでもエントリーできる「通年採用」にし、

②「新卒」とか「中途」という概念を一切やめ、

インターンシップなどの様な、企業と個人がお互いを見極められる時間と手間をかけた採用方法を自分達で考案する、

というものです。一見するとこれらは若年層を尊重した見解の様に見えますけど、全くそんなことはありません。むしろこの主張の中には、若年層にとって不利に働く要素が沢山含まれています。

 

①の「通年採用」は、企業側の負荷は大きくなりますが、若年層、新卒者にとってそれほどマイナスではありません。しかし②は大問題です。

 

確かに欧米というか、日本以外の国では②が当たり前であるわけですけど、公共職業訓練機能も、ドイツの様なデュアルシステムも、プロフェッショナルスクールも機能していないに等しい今の日本で、これを推し進めることは全く的外れで、雇用問題について無知も甚だしいと言わざるを得ません。

 

現状の日本で「新卒」「中途」の別をなくしてしまえばどうなるか?新卒者が正社員の職を得る、職業人としての基礎教育を受けられる環境で働く機会は、著しく減少することになります。確かに2015年や2016年の新卒者は「売手市場」と言われ復調傾向です。これによって、定義の曖昧さは横に置いておくにしても、近年の「ブラック企業問題」も、幾分歯止めがかかってくると思います。しかしこれも「新卒採用」が厳然として行われているが故に成り立つ話です。

 

現実には考えにくいですが、もし本当に日本の大企業の多くが、上記②を前提とすることになったらどうなるか?余程余裕があり、自社のカルチャーに人材を染めていくことにこだわりのある企業以外は、教育研修にカネも時間もかからない職業経験のある人材の採用にシフトし、新卒者の採用枠は今よりもずっと限定的になります。結果として、再び「ブラック化」が急速に進むことになるでしょう。

 

つまり、何らの政策も講じず、社会的受け皿も醸成せずに、今の日本で「新卒」「中途」の採用区別を無くせなどと無責任に主張する輩は、就職せずに学生から直で起業しようという様な極限られた学生を除いた、マジョリティの学生を全く無視し、彼らに何らの敬意もはらっていないわけです。

 

さらに付け加えるならば、②で「新卒」「中途」の区別を無くした上で、③のインターンシップを通じた採用を広めようとする動きは、少ない新卒者の採用シートの奪い合いを助長し、「無給インターンシップ」を常態化させます。これが、日本のブラック企業問題の様に、既に米国でも社会問題化しているというのは、少し雇用に通じた者なら誰でも知っている常識です。

 

もちろん、私も起業家マインド豊かな人材輩出の必要性は当然あると思っていますし、今の日本の新卒採用の形がベストなどと思っているわけではありません。しかしながら、学生が起業しやすくするために、「新卒一括採用廃止」を呼びかけるというのは、あまりにも「副作用」が大きく、無責任で本末転倒の言動であろうと思います。

 

私は、新卒採用のお手伝いをする場合、必ずクライアント企業に、「全員でなくても構わないので、独立・起業志向の学生を採用する枠を2割は設けて欲しい」とお願いすることにしています。仮にかつてのリクルート・グループの様に「独立起業志向の人材大歓迎」というのでなくても、「自己の成長」のために、何事も「我が事」と考えて仕事に取り組む人材の多くは、顕在化するかしないかは別にして、「独立起業志向」であり、そうした人材を取り込むことのメリットは小さくないからです。そういう人材の目標達成意識はそうでない人間の比ではありませんし、他の人材に与える刺激も大きく、結果的に人材レベルを大きく引き上げます。

 

会社組織側も、余程の成長性がない限り、新卒者の全てに将来の管理職ポストを用意することなどできません。また組織というのは健全で適度な新陳代謝があった方が活性化しますし、人材というのは上の人材が抜けていくことによって育つという側面もあります。

 

日本に何人そういう学生がいるか知りませんが、今すぐに起業しなければチャンスが去るという様なビジネスプランや技術を持った学生が起業することを、私も止めようとは思いません。それほどの可能性がある人なら、成功の振れ幅はあっても、何がしかモノにはなるでしょうから、就活などせずに起業されれば良い。

 

しかしながらスポーツ選手ならいざ知らず、どんなに起業家としてのポテンシャルが高くてもポテンシャルに過ぎなければ、3年や5年の社会人経験を積むことは、プラスになることはあってもマイナスにはなりません。功罪はあっても、まともな職業人教育というものが企業組織内にしかないと言って良い今の日本では、それはとても大切な過程なのだと思います。ましてや、起業という道で生きていく極一部の人以外の、大部分の人間にとってはそうでしょう。

 

大企業への採用戦略上の対抗軸として、「新卒一括採用廃止」を掲げるベンチャーが出てくる事は大いに歓迎すべき事です。昔のリクルートも、「他企業が採用しない様な人材」だけど「とても優秀」という人材を採用して成長しました。それは大いに結構なことですけれど、「新卒採用」を続ける企業を批判し、大企業に「新卒採用を廃止せよ」と呼びかけるのは、とてもカッコ悪い。そう私は思います。

 

むしろ、新卒一括採用は維持するけれど、組織・人材レベルアップのため「“卒業歓迎”枠」を設けて採用する懐の深い企業であったり、そういう企業に魅力を感じる就活生であったり、それを容認できる親であったり。そういう模索、試みの方が現実的であると同時に、実りも大きいのではと考えます。

 

この道しかない、グローバルスタンダードに合わせるしかないというのは、クリエイティブでもなければ、クールでもない。ただの知性の不調だと言わざるを得ない。そう私は思います。

 

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