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特定社労士「労働者代理人」の視点

大阪・梅田で「労働紛争解決(あっせん等裁判外紛争解決手続の労働者側代理など)」「就活」「転職」を支援するリクルートグループ出身の特定社会保険労務士が一筆啓上!すべての「働く人」に役立つ知識と知恵をご紹介します。

前略、あっせん代理の現場から③「解雇・退職トラブルのポイントは退職届・退職願」

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近年は使用者側でも「解雇はそう簡単にできない」という認識が広まり、定着してきたこともあって、紛争件数としては減ってきている様に思いますが、それでも依然として「解雇・退職トラブル」は、個別労働紛争のあっせんで扱われる事件のカテゴリーで主なものであることに変わりはありません。

 

解雇・退職トラブルで最も誤解が多く、労働者の誤った対応が散見され、重要ポイントになるのが「退職届・退職願」の取り扱いです。

 

退職とは「労働契約の終了」を意味しますが、一般的な分類では、これには①自主退職(労働者による解約)、②合意退職(労使双方の合意解約)、③解雇(使用者による解約)、④自然退職(有期雇用契約の終了、定年、休職期間の満了など)の4種類があります。

 

この内、退職届・退職願の提出が必要なのは、①自主退職と②合意退職の場合のみです。

 

しかし、この点を誤解している労働者はとても多く、使用者の「本来解雇に相当するのだが、君の転職や将来のことを考えて穏便に済ませたいと思うので、直ぐに退職願を提出してください」という様なトークに応じて退職願を提出し、受理されて合意退職に至るというケースがよくあります。

 

その後「不当解雇ではないか」と大騒ぎして、我々特定社会保険労務士や弁護士に相談に来られる労働者の方も多いですが、これは後の祭りです。退職届・退職願を出してしまってからでは「不当解雇」で争うことは99%できません。

 

解雇・退職トラブルに遭遇した際に、労働者が心掛けるべきは、まず使用者に何を言われても「退職届・退職願は書かない」こと、次に「労働者側あっせん代理人を受けてくれる特定社会保険労務士に相談する」ことの二点です。

 

あっせん代理の現場感覚で言えば、解雇トラブルの9割は「不当解雇」であり、争えば認められず、労働者側に有利な結論に至ります。多くは金銭解決となりますが、解雇から解決に至るまでの賃金(バックペイ)と最終的に使用者側の要望を受け入れて退職することを含んだ解決金を併せれば結構な額になりますから、解雇・退職トラブルについては、泣き寝入りなどすべきではありません。そのためにも、既述の様に、労働者は初動を間違えない様にすることが大切なのです。

 

ちなみに、「退職届」と「退職願」の違いですが、前者の「退職届」は提出した時点で労働契約の「解約」を意思表示したことになり、効力が発生して退職は撤回できなくなります。後者の「退職願」の場合は、労働者から使用者への合意解約の申し込みであるので、使用者のそれを承諾する意思表示が労働者に達した時に、労働契約終了の効果が生じることになります。ですから使用者が承諾の意思表示をする前であれば、撤回も可能です。通常は労働者側では「退職願」を使うのが一般的ですが、使用者側の退職に関する引き留め圧力が強く、一日も早く労働者が退職したい場合などは「退職届」を使うことになるでしょう。

 

いずれにしても、解雇・退職トラブルに巻き込まれたら、直ぐに労働者側あっせん代理人を務める特定社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。

 

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前略、あっせん代理の現場から② 「固定残業代制(定額残業代制)は本当に悪か?」

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個別労働紛争のあっせん代理では、解雇・退職強要、パワハラと並んで、未払残業代の問題を多く扱います。

 

ただ一口に未払残業代と言っても、残業時間を把握せず、まるで残業代を支払う気のない、いわゆる「サービス残業」の問題と、毎月一定額を残業代として支給する「固定残業代(定額残業代)」をめぐる問題の大きく二つに分かれる様に思います。

 

前者は使用者側の明確な法違反ですから労基署申告の対象にもなりますし、労働者側としては、穏便な社内での話し合いによる解決から、あっせんや労働審判といったハードランディングまで様々な解決オプションが考えられますが、いずれにしても使用者の側に改善を求めていくということになるでしょう。

 

後者については、一般に大きな誤解があります。制度そのものは本来合法であるにもかかわらず、一部の労働者支援NPO等が、固定残業代制(定額残業代制)を繰り返し痛烈に批判するなどしたため、「固定残業代制(定額残業代制)=悪」というレッテルは定着し、今や「固定残業代制(定額残業代制)」はブラック企業の代名詞にさえなってしまっている感があります。

 

では本当に「固定残業代制(定額残業代制)=悪」なのでしょうか?

 

確かに、特定社会保険労務士の視点でチェックしていっても、適法・適正に「固定残業代制(定額残業代制)」を運用できている企業は、現状大変少ないとは思います。しかし、本来合法であるにもかかわらず、運用が不十分だからと言って、ただただ「固定残業代制(定額残業代制)=悪」「固定残業代制(定額残業代制)はブラック企業の代名詞」とこき下ろしているだけで良いのでしょうか。何の問題解決にもならず、労使どちらのためにもならないのも事実でしょう。

 

勿論、立法によって「固定残業代制(定額残業代制)」を廃止するというアプローチも無いわけではありません。しかし、現行制度を正しく運用するための法改正や助成金などの補充措置を講ずる方が有益と考えられる部分もあります。なぜなら「固定残業代制(定額残業代制)」が正しく運用できている場合には、労使双方にいくつかのメリットをもたらすからです。

 

①正しく運用されている「固定残業代制(定額残業代制)」では、定額分の時間外労働を超過した場合、追加的に残業代を払うことになるため、人件費アップにつながる長時間労働にブレーキをかける効果がある、

②労使の協議等に基づいて適正に設定された定額分の時間外労働時間であれば、労働生産性を上げる工夫を行うことで、定額分以下の時間外労働で業務を終え、実質的に時間単価アップになる労働者も出てくる、

③組織全体の労働生産性の向上、業務効率化が進み、収益性を高める組織風土が醸成される等がそれらに当たります。

 

私は労働者側のあっせん代理人として「固定残業代制(定額残業代制)」と向き合いますが、別の労使間では使用者側の顧問等として「正しい固定残業代制(定額残業代制)」の導入を支援しています。

 

既述の①~③の様な労使双方のメリットを引き出すことができ、株式公開(IPO)準備企業の様に、労働時間管理を中心とした厳格な労務コンプライアンスが求められる場合には、労働者に労働時間決定の裁量が委ねられているフレックスタイム制の導入などと併用で、「固定残業代制(定額残業代制)」を導入していくというアプローチが私の場合は多いと思います。

 

「固定残業代制(定額残業代制)」をあたまから否定し非難することで、かえって「サービス残業」を助長することになってはいないか。そういう点にも意識を及ぼしていくべきでしょう。

 

繰り返しになりますが、現在の一般的な「固定残業代制(定額残業代制)」の運用で良いとは、私も少しも考えていません。しかし、少なくとも新たな制度が作られるまでの間は、それが適法かつ適正に機能する補足手段を講じながら、ありものを上手く使う「ブリコラージュ」の視点もあまり軽視すべきではないと思います。

 

そうしなければ、未払残業、とくに固定残業代(定額残業代)をめぐる紛争は、当面増えこそすれ、減ることはないでしょう。

 

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前略、あっせん代理の現場から①「パワハラをめぐる労働紛争の実際」

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私は、使用者側の業務として就業規則・賃金規程作成や人事制度策定を手掛ける一方、労働者側の労働相談やあっせん代理(個別労働紛争の裁判外紛争解決手続)業務を数多くお引き受けしています。

 

後者で、労働相談からあっせん代理へと発展するケースの内、ここのところ急増しているのは、何といってもパワハラ絡みの労働紛争です。

 

但し、実際にはパワハラそのものが争われるというケースは意外な程に少なく、むしろパワハラが起点になって、退職強要、不当な降格や労働条件の引き下げ、解雇などが生じ、それが争われるというケースの方が多いかと思います。

 

何故かと言いますと、執拗かつ明確なパワハラによってメンタル不調をきたし、裏付ける医師の診断書もあって、相談者が弊所にご来所頂く際は既に休職状態という場合でも、パワハラを立証する客観的な証拠がないケースがとても多いからです。

 

われわれ特定社会保険労務士が代理人となるあっせんでは、あっせん委員は事細かな事実認定を行いません。現実にあっせん委員からもあっせんの冒頭でそう言われることが多く、ある意味あっせんでは心証形成が勝負という様なところがあります。ですから客観的な証拠がなくても、労働者本人からの聴き取りが信ずるに足るものであれば、それを基に理路整然と、パワハラによるメンタル不調⇒安全配慮義務違反・不法行為で、損害賠償請求を行います。

 

しかし、司法の場では厳密な事実認定を行いますから、それらの主張がなかなか認められないことは相手方のあっせん代理人(特定社会保険労務士でなく弁護士の場合もある)もよくわかっています。ですから結局、パワハラそのものについて掘り下げたところで水掛け論になるだけです。そのため既述の様に、パワハラによるメンタル不調から派生した退職強要、不当な降格、労働条件の引き下げ、不当な解雇などについての金銭解決に争点は移っていきます。結果、パワハラはそれらの争点についての心証形成の導火線として使うということが多くなるわけです。

 

ここから見えてくることは何でしょうか?

 

労働者側については、あくまでパワハラそのものについても損害賠償を得たいと考えるのであれば、使用者側からのパワハラメールは必ずプリントアウトして整理し、口頭でのパワハラはICレコーダーやスマホの録音アプリを使って丁寧に録音しておくことです。これらがあれば、あっせんの場であれ、司法の場であれ、使用者に非を認めさせ、パワハラそのものについても慰謝料ほか損害賠償を得ることができるでしょう。また同時に行政おいては、パワハラによるメンタル不調で通院したり、就労できないのであれば、労災認定されて給付を受けることも、高い確率で可能になります。

 

使用者側では、なまじ法律を知っている管理部門の人間などに多いのですが、「パワハラそのものについては、客観証拠で労働者側が立証しない限り、損害賠償するには至らない」と高を括っている人が居て、こういう人が会社をリスクにさらしてしまいます。

 

私の経験上も、数は少ないとはいえ、数回にわたって行われた数時間の上司からの叱責をきっちり録音して持ち込んだ労働者がおられました。叱責の全てがパワハラに当たるものではありませんでしたが、その何割かは言い逃れでできない様なパワハラ発言でした。その気になれば今やICレコーダーやスマホで録音するくらい容易いことなのです。

 

法に通じている管理者や経営者こそ、パワハラ防止の体制づくり、研修等による啓蒙を通じて、パワハラ予防を率先垂範して頂きたいと思います。現代の企業防衛の重要な一手だと考えます。

 

 

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