「ワタミで労働組合結成」の報と労組のデファクトスタンダード化
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居酒屋チェーン大手のワタミで、正社員約2,000人、アルバイト約15,000人の8割弱からなる労働組合「ワタミメンバーズアライアンス」が結成されました。
産業別労働組合「UAゼンセン」が上部団体として支援し、今後は入社すると「ワタミメンバーズアライアンス」に加入することになる「ユニオンショップ協定」も労使間で締結された様です。
2008年に傷ましい新入社員の過労自殺が起こり、ワタミと当時の代表取締役が訴えられ、昨年12月に和解。懲罰的慰謝料と逸失利益で計1億3000万円超の損害賠償金がワタミから支払われるとともに、「過重労働再発防止策」の策定が和解事項に盛り込まれました。
この間、ワタミの企業体質に批判が集中し、顧客離れと労働者離れが加速して店舗の閉店等により急激に業績が悪化。ついには居酒屋と並んで収益の柱であった介護事業を売却するに至っています。
経営再建のためには、本業である飲食事業の立て直しが不可欠で、コンプライアンス体制の確立は勿論、良好な労使関係の構築が待ったなしですから、ある意味今般の労働組合結成は当然の帰結というべきでしょう。
私が使用者側で関わることの多い仕事、採用支援(正確に言うと採用できる会社づくりを含む)と株式公開準備企業の労務コンプライアンス支援においては、前者では「(応募者にとって)入社する会社は本当にブラックではないか」、後者では「どこまで社員の協力を得て上場審査をパスできる労務コンプライアンス体制ができるか」が、それぞれを実りあるものとする上で、今日的キー・ファクターになっています。
そして、実は労働組合が結成されて健全に機能していることは、これらキー・ファクターをクリアする上で大きくプラスに働くものです。
採用支援に関しては、労働組合が機能していることで、少なくとも労働条件等の確認、コンプライアンス状況の把握については、何ら懸念がないことを応募者に対して訴求、説明できるわけですから、今日の様にブラック企業症候群が蔓延している、労働人口急減時代においては、労組の存在自体が採用上の効果的なアイテムとなるのは間違いありません。
一方、株式公開準備企業の労務コンプライアンス支援では、上場企業に相応しい労務管理体制を構築すると同時に、時には部分的な不利益変更を労働者側にお願いすることも少なくありません。この際、当然労働者側への説明、労働者の同意が必要になってくるわけですが、労組がなければ、場合によっては個別同意を得る必要にも迫られ、業務遂行に膨大な時間を要することも考えられます。
またもっと本質的な問題として、コンプライアンス体制というのは、結局のところ組織風土に大きく左右されます。従って、既述のような手続き上の問題以外にも、労組が機能していないことで労務管理における遵法意識が希薄なまま組織が大きくなり、いざ上場準備となっても法や社会常識とのギャップが埋まらず、株式公開そのものを断念せざるを得ない企業というのも世の中には少なくありません。
労働組合の結成について多くの経営者にアレルギーがあるのは承知していますし、労組結成を強行規定とするのもおかしな話です。確かにそれは行き過ぎだと思いますが、少なくとも証券取引所は、その上場審査において、労組の結成と適切な運営を実質審査基準とすればどうかとは思います。
そうしたアクション一つで、少なくとも労働者の上場企業への信頼感は大きくアップしますし、仮に非上場の企業でも、上場企業に伍して採用をしたいと思うなら、労組結成を加速するでしょう。
法律をつくる以外にも労働問題に風穴をあけることはできる。ワタミの初の労組結成のニュースに接して、改めてそんなことを考えました。
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