特定社労士「労働者代理人」の視点

大阪・梅田で「労働紛争解決(あっせん等裁判外紛争解決手続の労働者側代理など)」「就活」「転職」を支援するリクルートグループ出身の特定社会保険労務士が一筆啓上!すべての「働く人」に役立つ知識と知恵をご紹介します。

「固定残業代=ブラック企業」は早計。もっと黒い「裁量労働制」。

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表現は様々ですが、労働者側弁護士やユニオン(合同労組)のWebサイトを見ていると、実質的に「固定残業代=ブラック企業」と言い切っているコンテンツを数多く目にします。しかしこれはちょっと行き過ぎではないか。正直、そう私は感じています。

 

もちろん、「固定残業代(定額残業代)」という仕組みを正しく運用できていない企業が多いのは間違いありません。その内何割かは、違法性を認識しているでしょうし、敢えて違法行為を行っているのですから、ブラック企業と言われても仕方がないでしょう。

 

しかし、「固定残業代」というのは一定の条件の下で認められた仕組みです。正しく運用されれば、悪いことばかりではありません。例えば、30時間の固定残業代が、本来あるべき正しい残業単価×30時間で支払われていて、それを超える残業については別途支払われる。逆に25時間の残業で職務を全うできれば、30時間分の固定残業代が支払われるのですから、計算上は得ということもあり得るわけです。賃金総額を変えずに、本来の基本給を基本給と固定残業代に分ける不利益変更を伴った、使用者側がやりがちな導入方法などはもちろん論外。そういうエクスキューズは入るわけですが…。

 

また、求人票等に関しては、固定残業があるなら、それを明示して記載すべきだと思いますし、厚労省もこの点についてはもっときちっとした立法化で規制すべきだと私は強く思っています。

 

しかし、だらだら残業せず、能率アップと長時間労働の抑制のために、「固定残業代」を使い、「固定残業分よりも短い時間で仕事を終えて、仕事の価値を高めろ」というマネジメントだって理論的にはあり得ますし、現実にそういう企業も存在します。弁護士や労働組合の「白いものも黒」あるいは「グレー」という過度なレッテル貼りは如何なものかと私は思うわけです。

 

そんな事を言いだしたら、これも制度として限定的に認められているものですが、「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の方が、限りなく黒に近いわけです。仮に1日の労働時間を10時間とみなしたら、法定労働時間の8時間を上回る1日2時間分、大体通常の企業で月間最大44時間くらいの割増賃金を固定の「裁量労働手当」として払っていたら、裁量労働制の対象労働者が月間60時間、70時間の時間外労働をする月があったとしても、その固定の「裁量労働手当」以上の賃金を払わないで、一先ずは合法ということになります(実態とみなしに乖離が大きく、それが恒常的なら、紛争になった場合、使用者側は負ける可能性はありますが…)。

 

上記の様な「裁量労働手当」が出ているケースはまだ良い方で、大企業ならまだしも、中小企業が裁量労働制を導入した場合、みなし労働時間=法定労働時間の1日8時間、残業実態は月80時間超なんていうのもザラです。これでも、裁量労働制の導入・運用手続に瑕疵がなければ、おそらく労基署は動かないでしょう。結局、あっせん、労働審判、訴訟などを労働者側が申し立てない限り、こういう理不尽がまかり通ってしまうわけです。

 

裁量労働制」には、やり方によっては「固定残業代」の様に、労働生産性を高め、長時間労働を防ぐという機能を期待することはできないでしょう。基本的に紛争にならない限り、働かせ放題。それが「裁量労働制」だからです。

 

こう考えていくと現在対象労働者を拡大しようとしている「裁量労働制」の方が余程悪質で、非難されるべきものであるのに、弁護士も労働組合も、非難の矛先をそちらには向けません。要するに、「固定残業代」よりも「裁量労働制」のトラブルの方が少なく、商売にならないからということなのでしょう。むしろ「裁量労働制」が拡大されたら、自分たちの飯の種が増えるくらいに思っているのかもしれません。

 

使用者側、労働者側双方に関わる労働現場のプロであるからこそ、特定社会保険労務士としては、こうした実相をこれからも発信し続けていかなければと思っています。あるべき労使関係のために。

 

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