特定社労士「労働者代理人」の視点

大阪・梅田で「労働紛争解決(あっせん等裁判外紛争解決手続の労働者側代理など)」「就活」「転職」を支援するリクルートグループ出身の特定社会保険労務士が一筆啓上!すべての「働く人」に役立つ知識と知恵をご紹介します。

藤田晋サイバーエージェント社長の「ブログ激怒」問題から見えるもの。「雇用」の文脈から捉え直す。

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サイバーエージェント(以下CA)藤田晋社長が書いた、過去に失敗し会社に大きな損失を与えた従業員のライバル他社への転職に激怒、それを「意図的」に社内に流布したというブログ記事が、随分と話題になっています。

 

私は個人的にはCAという企業の人事の取り組みに関して「日頃から高く評価している」、いや、なんだかあまりにも偉そうな表現なので訂正。「学ぶべきところが沢山ある」と思っているので、自称「グローバリスト」のベンチャー経営者や彼らとつるんでメシを喰っている“ベンチャー芸人“の様に、「今回の件はグローバルスタンダードからは外れているけど、藤田さんは成功者だからそれはそれでアリ」みたいな何の説得力もない意見を読むと吐き気がしそうになります。

 

一方で、今回の藤田さんの言動は、人材確保が死活問題の業界の経営者としては当然と無条件で支持同意署名する論者も少なくない。私の意見とは違いますけど、「グローバルスタンダードからは外れているけど、藤田さんは成功者だからそれはそれでアリ」みなたいな連中よりは、こちらの方が余程筋が通っている様に思います。

 

私の勝手な意見も後々述べますが、そこに辿り着くには二つのことに触れておかなければなりません。

 

一つは、CAの人事施策は、それが藤田さんの人事観とイコールなのかどうかは分かりませんが、長期雇用を前提とした典型的な「メンバーシップ型雇用」であるという点です。だから新卒採用の採用基準で重きを置いているのは「一緒に働きたい人間かどうか」であり、起業家精神溢れる人材に「グループ内起業」というオプションを提示し、女性が長く働き活躍するための人事制度として「macalon(マカロン)パッケージ」といったものも設けていたりするわけです。

 

第二に、人事をリクルート出身者が主導していたり、藤田さん自身が、宇野さんや鎌田さん(リクルートコスモス出身で、あまり接点はなかったものの私も同期の端くれ)が創業したインテリジェンス出身であることから、CAをリクルートDNAの企業と見る人も多いですし、私もそう思っていた部分もあるのですけど、実際は根本的に違っている。昔とは大分変化しているでしょうけど、それでも殆どの人間が「卒業」を意識していて、使用者側もそれを自然に受け止めているリクルートとは、各論というか個別の制度に似ている部分があっても、総論としては全く違う企業風土なんだというのを、頭に置いておく必要があると思います。もちろん転職、起業はCAでも日常茶飯事でしょうけど、使用者側の思いはCAとリクルートでは大分違うのではないかと思うわけです。

 

この二つのフィルターを通してみると、わかることがあります。

 

リクルートの場合、入口は「メンバーシップ型雇用」で始まるけれど、結局「卒業」を念頭に置いているから、実際に「卒業」するかどうかは別にして、やがて売れる「スキル」「経験」というものに、いやでも向き合っていくことになる。その意味で「ジョブ型雇用」とまで言い切れるかどうかは微妙なものの、少なくとも必要以上の「組織への忠誠心」は使用者側も求めないし、働く側もそういうものにアレルギーがある。そこで一番強く求められるのは「仕事への忠誠心」なわけです。その意味でリクルートの雇用の形はメンバーシップ型とジョブ型の「ハイブリッド型」と言えるかもしれません。

 

ですから私なども個人的には、今回の藤田さんの言動について、リクルートDNAに照らせば「俺のとは違うな」「イケてないな」と思うわけです。「恐怖で縛るマネジメントなら、○通信とか、○タミ」と変わらないと。しかし、「メンバーシップ型」雇用の純粋形を追求し、それを提供し続けるというのが、藤田さんやCAの理念であるならば、過度な言動なら問題はありますが、「組織愛」への裏切りにはある程度の批判はあっても致し方ない。「メンバーシップ型雇用」で成り立つ共同体の統治に愛憎はつきものだからです。その意味では今回のケースが特に異常だとは思いません。ただ繰り返しになりますが私は好きじゃない。そういうのが好きでない人は、入社しない方が良い会社だとは思います。

 

しかし逆にそういう共同体が大好きだという人も沢山います。そういうところで「普通に頑張って働く人」がむしろマジョリティだし、そういう人にとっては、CAは特に居心地の悪い会社ではない。法に触れるようなことでもなければ問題ないし、ガラパゴス人事であるか否かなんていうのは、株主が言うならいざ知らず、利害関係のない外野の意見など、大きなお世話というものです。

 

 

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