特定社労士「労働者代理人」の視点

大阪・梅田で「労働紛争解決(あっせん等裁判外紛争解決手続の労働者側代理など)」「就活」「転職」を支援するリクルートグループ出身の特定社会保険労務士が一筆啓上!すべての「働く人」に役立つ知識と知恵をご紹介します。

就活に「キャリアデザイン」は要らない。「他己分析」「ポートフォリオ」「リアクション」こそが大切。

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2015年新卒から急激に回復基調の新卒採用。世界経済を揺るがすような経済問題が浮上でもしない限り、2016年新卒は「売り手市場」になると予想されます。

 

世の中的には「今の学生は就活で虐げられて可哀想だ」とか「新卒一括採用が大企業信奉、ブランド就職を助長しているからけしからん」とかいう意見もあります。確かに今の就活に問題がないとは思いませんが、「新卒一括採用」という、潜在能力を重視して、ある意味職業スキルのない学生に下駄を履かせる採用方法が採用の中心であるおかげで、20代~30代前半という職業スキルを身に付けるのに最も適した年代に、その機会を最大限享受できる「若年層の低失業率」が日本で実現していることは、社会政策的に見れば、若年層失業率が二ケタである国も珍しくない欧米諸国よりも優れているのではないかと私は考えています。

 

少し脱線になりますが、たまに社会保障の議論で「中高年はこれ以上若年層に負担をかけるな」という様な論を展開する20代~40代の論者が、労働の話になると、欧州を見ても明らかな様に、マクロの失業率で明らかに若年層にマイナスに働く「新卒一括採用廃止」を唱えたりしています。これはきわめて奇妙、不可解、ロジック・エラーな話です。要するにこういう人は「改革」を唱えることに価値があると思い込んでいるだけの特に中身のない人(どこかの大都市の首長の様な人)と考えて間違いないでしょう。こういう人にはご注意下さい。

 

さて本題に戻ります。景気動向によって、世代間で格差ができてしまう「新卒一括採用」の欠点を補うことにもなり、企業としての人材マネジメントにもプラスに働く、通年採用や既卒者を対象とする採用、さらには第二新卒の採用が、メガベンチャーなどを中心に、既存の大企業にも「自発的」に拡がっていくことは、むしろ歓迎すべきことです。いきなり「新卒一括採用を廃止しろ!」とシュプレヒコールを上げても、それは単に「これから入社する若者」だけでなく、濱口桂一郎氏の言葉を借りれば、「人」に「仕事(職務)」をはりつける「メンバーシップ型」雇用という仕組みを通じて、全年次の従業員に影響を及ぼす話ですから、既存の大企業に様にソリッドな組織であればあるほど、簡単にこの慣習を変えることはできません。「採用ブランド」を持った大企業の損得勘定だけが、「新卒一括採用」の廃止を阻んでいるわけではないのです。ですから新興企業から徐々に柔軟性のある入社の仕組みを導入し、それに労使ともに対応していくことの方が、余程現実味のある話です。「メンバーシップ型」が雇用の中心であるこの国で、「新卒一括採用」がメインの採用方式でなくなるには、なお10年、20年を要するでしょう。

 

であるならば、少なくともこれからもしばらくは、「新卒一括採用」がメインストリームにあることを前提にして、就活生の側では効果的な準備をしていくことが求められるわけです。そのためには、どうしたら「成功」するかより、「失敗」しないようにするにはどうするかを考えることの方が現実的には役立ちます。去年から今年にかけて、私が行った就活相談の例などから、はっきりとして傾向が出ていることを列挙すると以下の様になります。

 

①「自分のやりたい事」に固執し過ぎると苦労する学生が多い(どっかの国のサッカー代表みたいだけど)、

②働いたこともないのに「入りたい会社」のイメージを勝手に膨らませ、それを引きずって同業種・同業態を上位から下位まで受けるという様な就活はリスキー、

③「自己分析」に時間をかけ過ぎ、思い違いのまま就活を続けて失敗する、

④総合商社や広告代理店を除き「BtoB」企業に目を向けないこと自体が選択の幅を狭くしている、

などですが、ここから最低限心得ておくべき就活の「要諦」の様なものが見えてきます。

 

要諦は大きくわけると三つです。

 

まず一つ目は「他己分析」が大切だということ。世の中にどんな仕事があるかを知る努力はもちろん必要ですが、本格的に仕事をしたことがないのだから、そもそも何に自分が向いているかなんて分かるはずがありません。ですから「キャリアデザイン」しようなどとというのが土台無理な話なわけです。先の③とも関係してきますが、「適性検査」なども参考程度にとどめ、「自己分析」も程々にして、まずは自分の身近な大人達(社会人になったゼミやクラブの先輩等)にインタビューして、他人の目に自分の長所・短所はどう映っているのかを、洗い直すことから始めてみるべきです。そこから考えて、どんな業界で求められる人材特性と合致しそうか。それはまさにOB・OG訪問等に足を運び、自分の中で摺り合わせていく必要があります。

 

第二に「ポートフォリオ」で考えて動くということ。①や②と関連してくることですけれど、「他己分析」と「自分の働きたいイメージ」という二つの軸をクロスさせることで、少なくとも三つくらいのゾーンの企業群を就活先としてスクリーニングし、偏らずにそれら三つの企業群に対して丁寧に活動していくことが重要です。「向いていている」と判断しくれる業界・企業が、自分の希望と合致すれば一番良いことですけど、そうとばかりは行きません。「向いている」と言われるけど、考えても見なかった業界・会社や、希望とはピッタリだけれども「向いている」とは言われなかった業界・会社というのも捨ててはいけないということです。「他己分析」も「自分の働きたいイメージ」も実際とは当然ギャップがあるものです。そうしたギャップが埋まっていくの就活というものだろうと思います。

 

最後に「リアクション」を大切にするということです。もちろん、このブログでも再三書いていますが、熱心に誘ってくれた会社であっても、当世の事ですから労働条件やワークスタイルについては十分な吟味が必要です。しかしそれが特に問題ない範囲にあるのであれば、「縁」を大事にするということは、日本の雇用スタイルでは大切だと思います。良く引用させてもらうのですが、『日本辺境論』の著者で哲学者の内田樹氏のブログ記事に「仕事力について」というのがあります。この記事でもあるように、「天職」は英語で「コーリング(calling)」と言いますが、特に日本の様に「仕事(職務)」に「人」をはりつけるのではなく、「人」に「仕事(職務)」をはりつける「メンバーシップ型」雇用の国であれば、何の仕事をするかはどの会社に「呼ばれる」かによって決まるわけです。それは殆ど偶然と他人からの期待によって出来上がっているものであり、内田氏の言う様に、「キャリアのドアの内側にはドアノブ」がないというのが感覚的には近いものだと思います。

 

少なくともこの三つを心掛けておくと、失敗が少ない就活はできるだろうと思います。特に、先の④で挙げた様に、優良であったり、将来的なキャリア開発にも役立つ会社であるにも関わらず、「分かりにくい」というだけで就活生から敬遠されているBtoB企業にも関心を払うと、2016年の新卒採用であれば大怪我はしない様に思います。もちろん少々怪我をしてもいくらでもリターンマッチは可能なんですけどね…。

 

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