特定社労士「労働者代理人」の視点

大阪・梅田で「労働紛争解決(あっせん等裁判外紛争解決手続の労働者側代理など)」「就活」「転職」を支援するリクルートグループ出身の特定社会保険労務士が一筆啓上!すべての「働く人」に役立つ知識と知恵をご紹介します。

「限定正社員」制度の現在と未来。労働者の損得勘定はどうなる?

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職務・勤務地・労働時間等をあらかじめ決めて働く「限定正社員」をめぐって、厚労省は13日、雇用ルールの注意点を盛り込んだ指針案をまとめ、判例上限定正社員も安易な解雇は認められないことを再確認し、就業規則や労働契約書のひな型も例示しました。今日はこの「限定正社員」について。

 

「限定正社員」については、現行法での取り扱いと法改正の動きを不勉強なマスメディアが混同して報道したり、一部の労働者救済NPOや労働問題の本質を理解していない似非人権派弁護士等が「解雇されやすい正社員だ」と過剰反応しており、労使双方に誤解を引き起こしている面があります。

 

現行法下でも「限定正社員」制度は多くの企業で導入されています。職務・勤務地・労働時間等が限定されているとは言え、法的位置づけは、正社員と同様に「期間の定めのない労働契約」で働く労働者ですから、不安定な「非正規雇用」の拡大から転換する意味でも、本来「限定正社員」を広めることは有力な施策のはずです。

 

しかしながら、安倍政権下で創設された規制改革会議や産業競争力会議で、民間委員らが解雇自由化論を積極的に展開。その延長線上で「限定正社員」を、職務が無くなった場合の整理解雇だけでなく、労働者の業績評価次第で自由に解雇できる、使用者側に使いやすい労働者と規定して拡大すべしとの暴論が繰り返えし議論された経緯から、労働側が一斉に反発。過度に不信感を持つ様になったというボタンの掛け違いもあり、既述の「限定正社員」=「解雇されやすい正社員」と喧伝され、今日に至っています。

 

今回の厚労省の指針案は、現行法の下でそうした誤解がない環境づくりを行い「限定正社員」を広めようとするものでしょう。「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認めれること」が現行法下の解雇要件ですから、「限定正社員」にも安易な解雇は認められません。しかし「正社員」とは事情が異なるケースもあり、勤務地限定の「限定正社員」が働く拠点そのものが無くなる様な場合は、配置転換もできないわけですから、確かに「正社員」に比べれば解雇要件は緩くはなるでしょう。しかしそれは非正規の不安定さとは比較にならないものであるし、だからこそ法整備を進め、「限定正社員」の解雇に際しての「再就職支援義務」か一定の「金銭補償」を法制化して濫用防止を図る必要性が出てきます。

 

現状では使用者側も、「限定正社員」の解雇要件が「正社員」よりは緩やかであろうと想像できても、明確なガイドラインがなく、拠点撤退時など労務リスクが大きいため、その拡大に二の足を踏んでいる企業も少なくないという議論があります。

 

大都市圏は兎も角、地方であればあるほど、大手企業の「限定正社員」が広がりをみせることの雇用環境改善に果たす意味は大きいはずです。雇用基盤が脆弱な地元の中小零細企業しか就業先としての選択肢がないより、ある程度福利厚生や教育研修がしっかりした全国展開企業等の「限定正社員」が選択できるメリットは労働者にとって小さくはありません。そのことが地方における労働環境全般の向上にも繋がるはずです。

 

労働側の「限定正社員」否定論は多分に感情的なものである様に思えます。解雇濫用防止ルールの明確化とワンセットで「限定正社員」が増えることは、労働者にとって明らかにプラスだと思うのですが…。

 

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