特定社労士「労働者代理人」の視点

大阪・梅田で「労働紛争解決(あっせん等裁判外紛争解決手続の労働者側代理など)」「就活」「転職」を支援するリクルートグループ出身の特定社会保険労務士が一筆啓上!すべての「働く人」に役立つ知識と知恵をご紹介します。

社労士が「補佐人」になって労働者が得られるメリットとは?

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通常国会も会期末に近づいていて、第8次社会保険労務士法改正法案が成立するかどうかという段階になっています。今回の法改正の焦点は、地方裁判所以上の審級における社労士の出廷陳述権の付与。可決成立すれば、弁護士が「代理人」として受任している事を前提に、訴訟はもちろん、非訟事件すなわち労働審判や民事調停においても、近い将来、社労士が「補佐人」として陳述することができるようになります。

 

こういう話になると、他士業の職域拡大反対に必死の一部の弁護士、彼らと一蓮托生で「闘争」をメシの種にしている(それが出版という方法であれ何であれ)一部の労働者救済NPOが騒ぎ立てるのが常ですが、「社労士の職域拡大」といった次元の話ではなく、労働者にとっての「労働問題解決オプションの拡大」という意味において、この制度を活かす者の努力によっては、労働者にかなりのメリットが出てくると考えています。

 

何度か書いていますが、労働問題の解決に唯一無二のベストプラクティスはありません。労働紛争において訴訟になった場合、労働者に有利な判決が出ることが多いと一般的には言われますが、それもあくまで一般論であって、個別の事件について必ずそうなるとは限りません。裁判を闘いぬく時間的・金銭的・精神的な負担を考慮してそれが得策かどうかは、労働者本人が決めることです。また、損得を度外視して訴訟をするかどうかも本人の意思次第でしょう。全体像を見通し、経験と知識を基にして、弁護士であれ、社労士であれ、労働者に解決の助言をすることはあっても良いしょうが、それが士業の論理で捻じ曲げられてはいけないと思います。

 

労働問題の解決方法と言っても、本人による交渉、行政指導等の「闘わない解決努力」に始まって、裁判外紛争解決手続(民間型および行政型ADR)、民事調停(司法型ADR)、労働審判、訴訟と段階があるわけです。労働者本人がその全てをテーブルの上に並べ、事件の内容および解決の理想形に従って、比較衡量して決められる環境が整うメリットは、実は計り知れません。これまで必ずしも十分でなかったこの環境整備は、社労士が「補佐人」となって訴訟と関わりを持つことにより、大きく動き出します。

 

もちろんその前提として、社労士自体の研鑽と、弁護士側の協働への意識、その両方が不可欠なのは言うまでもありません。社労士の中には、労働事件の訴訟代理権を将来的に獲得できる様にしたいという主張をされる方もおられますが、これには私は明確に「反対」の立場をとっています。社労士が民事訴訟法を学んでいるとかいないとか、そういう技術論の話ではなく、法曹と社会保険労務士制度の意義や成り立ちに鑑みても、社労士は労働問題に関して、紛争予防から裁判外紛争解決手続までを主として行い、労働審判や訴訟に及ぶ場合のシームレスで円滑な移行を、労使双方のために「補佐人」として行うということで良いのではないかと思うからです。訴訟代理に首を突っ込み、無用で不毛な対立を生むより、人的資源管理や組織開発を通じて、更なる労使関係の改善を目指す方が、余程制度の趣旨にも適うというものでしょう。

 

今国会で「出廷陳述権の付与」が実現したならば、今後は他士業の様に訴訟代理権の獲得といったエゴを振り回すのではなく、既に多くの社会保険労務士が調停委員となっている簡易裁判所における民事調停の代理権確立に注力し、行政・民間・司法の各ADR代理で労使をサポートする体制づくりに、社会保険労務士会連合会が舵をきってくれることを切に望みます。そして「補佐人制度」「出廷陳述権」の実効性を高める弁護士会との連携に力を注いでもらえれば、社労士がこれまでよりも一層、労働者にとって身近で頼りになる存在になるのではと思います。

 

 

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