特定社労士「労働者代理人」の視点

大阪・梅田で「労働紛争解決(あっせん等裁判外紛争解決手続の労働者側代理など)」「就活」「転職」を支援するリクルートグループ出身の特定社会保険労務士が一筆啓上!すべての「働く人」に役立つ知識と知恵をご紹介します。

労働者救済NPOの限界。「闘争」ではなく「労使間の楔(くざび)」というオルタナティブ。

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若年層を中心とした労働者救済を掲げるNPO等の活動が、近年盛り上がりみせています。昨年来、「ブラック企業問題」に世の中の耳目が集まった原動力は、そうした活動によるところが大きいと思います(一部に“ブラック企業アナリスト”なる浅薄で怪しい評論家がそれにタダ乗りしたりもしていますが…)。兎にも角にもその問題提起の社会的インパクトは大きかったと思いますが、「その先」には何があるんでしょう?今日はこれについて少し書きたいと思います。

 

誤解の無い様に、初めに申し上げておきますが、政党やジャーナリズムというフィルターを通じてこれらのNPOの発言力が増すこと自体に私は否定的ではありません。むしろ歓迎すべきことだと思っています。労働者救済NPOの一部には、「社労士は使用者の味方、労働者の敵」という固定概念をもってレッテルをはり、社会保険労務士を敵視する団体もありますが、それでも私に限らず大半の社労士が、労働者救済NPOの活動を部分的には好意的に見ていると思います。

 

実際世の中には人を人とも思わず、労使間にはらわれるべき敬意など全く頭をかすめない、「経営者」と呼ぶに値しない使用者がいることも事実です。それらに対し、言論、行政指導裁判外紛争解決手続労働審判・訴訟を通じた闘争を支援していくことは、必要不可欠です。しかしながら、それ一辺倒で現状が良くなっていくというわけではない。実際の労働問題、労働トラブルが「労働諸法令についての知識不足」「古くからの労働慣行」「使用者の人事労務管理に関する誤った思い込み」によってひき起こされているケースも大変多いということに、被害者意識に凝り固まった一部のステレオタイプな労働者救済NPOは、もっと自覚的であるべきだと思います。

 

私の労働問題解決業務を行う社労士としてのスタンスは明確で、いわゆる社労士としての独占業務での顧問先やスポット業務受託先、3号業務といわれる非独占のコンサル業務での関与先としてお仕事をさせて頂いた企業・法人については、以後100%企業側(使用者側)で行い、それ以外の企業・法人(要するに世の中の殆ど)に関する労働問題解決業務については、100%労働者側で業務を行うというものです。法的には勿論、道義的にも利益相反などあり得ません。弁護士さんは勿論、社労士にもどちらか一方の側でしか労働問題解決業務を行わない(行えない)という人が少なくありませんが、私はそれとは立場を異にしています。主義主張としては「労使関係最適化主義」を掲げており、社会的課題としての労働問題解決というトンネルを掘るのは、使用者側、労働者側双方から掘り進めるのがベストと考えているからです。

 

実際の労働問題、労働トラブルが「労働諸法令についての知識不足」「古くからの労働慣行」「使用者の人事労務管理に関する誤った思い込み」によってひき起こされているケースも大変多いと書きました。正確なデータはありませんが、体感値として、その数は確信犯的「ブラック企業」よりも随分多いのではないかと思います。その解決のための処方箋は、私は「闘争」ではなく「労使間の楔(くさび)」であろうと考えています。そしてこの「楔」にも二つあるのでないかという仮説を立てています。

 

一つはもちろん、私達社会保険労務士の日々の企業側(使用者側)業務の中での努力でしょう。仮に企業側(使用者側)にとって苦い薬でも、必要なものならば、様々に工夫を凝らして「良薬」を口にしてもらう、飲みやすい薬にして飲んでもらう努力でしょう。すなわち我々開業社労士自身が「楔」となることがまず必要です。

 

そして第二には、我々開業社労士が起点となって、人事労務担当者やその責任者に「楔」となってもらうべく支援することだろうと思います。コンプライアンスは勿論のこと、労使関係の改善努力が事業運営にもたらす効果を経営層にプレゼンし、実際にアクションを起こしていくのも、最前線にいる彼らです。開業社労士としての豊富な情報・知識と経験を彼らにフィードバックしていく仕組みは、特に直接社労士が深く人事労務管理にタッチする機会の少ない中堅以上の企業においては、重要になると思われます。

 

まだ完全に像を結んでいるわけではなく、それがNPOになるのか、いま新成長戦略で議論されている「ソーシャルビジネス法人」なる器になるのかはわかりませんが、この後者の仕組み創りには、是非とも幅広い連携の下で、チャレンジしていきたいと構想しています。

 

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