特定社労士「労働者代理人」の視点

大阪・梅田で「労働紛争解決(あっせん等裁判外紛争解決手続の労働者側代理など)」「就活」「転職」を支援するリクルートグループ出身の特定社会保険労務士が一筆啓上!すべての「働く人」に役立つ知識と知恵をご紹介します。

退職前提でも「争わない労働トラブル解決」が賢明な理由。

 

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「問題解決されれば在職し続けたい」というのであれば、「争わない労働トラブル解決」が良いのは言うまでもありません。では退職覚悟なら闘った方が良いかというとそうでもない。仮に退職を予定しても争わない解決が望ましい理由があるのです。今日はそれについて。

 

こういう事を書くと思慮の浅い「ブラック企業評論家」とか、労働問題を扱うNPO法人などから「社労士はやはり企業側(使用者側)に偏っている」と批判されることもあるのですが、今日でも転職希望者に対する「前職調査」というのは、減ってはいるものの、現実に無くなってはいません。

 

ネットで検索すると、「前職調査をされて転職を妨害された」というQ&Aサイトの書き込みもあれば、「今どき前職調査なんてしている企業はない」という極端な意見まで書かれています。実際のところどうかと言われると、おそらく定量調査はないだろうと思いますので、何割が実施しているかという様なことは分かりません。ただ、少なくとも私が管理本部長や管理部長をしている間に、退職者の転職希望企業から調査が入ったことは複数回あります。私自身は、「前職調査」は主観に左右される部分も大きいので、大した意味があるとは思いませんし、能力を発揮してくれるかどうかの見極めに時間を割きたいため、過去に使用者側で実施したことはありません。しかし、世の中そう考えない経営者や管理監督者もまだまだ多いのです。

 

一方、「前職調査」自体が違法であると言う人がいます。根拠法令は「個人情報保護法」と「労働基準法」ですが、どちらも違法であるとまで言い切れるものではないと考えるのが一般的です。前者は5000件以上の個人情報データベース(顧客も従業員も含む)を所持し事業に用いている企業を規制対象にしている法律ですし、それより少ない情報を所持使用している企業には努力義務があるに過ぎません。不適切かもしれないが、違法とまでは言えない企業の方が圧倒的に多いでしょう。また後者は、労働基準法22条4項で、使用者が第三者と謀って労働者の就業を妨げることを目的として労働者の国籍・信条・社会的身分・労働組合運動に関する通信をしたり、退職証明書に秘密の記号を記入したりするのを禁じているだけです。それ以外の事項についての調査を禁じているわけではありません。罰則規定はあっても、それが適用されるのは限定的で、立証も難しい。その状態では口頭ベースの「電話ヒアリング」による「前職調査」が無くなるとは到底思えません。

 

他士業も含めて、一般論として労働者側に立って「前職調査など不当だからあるべきでない」とか、「前職調査は違法の可能性がある」と言われるのは結構なのですが、現実に労働トラブルの解決に取り組む社労士からすれば、それは「目の前にいる個別の労働者」の問題としては、無責任と言わざるを得ない。

 

もちろん、労働審判や訴訟を解決手段として否定するものではありませんが、仮に退職前提で労働トラブル解決に労働者が臨むとしても、それらの解決手段は終局的なものという考えの方が、労働者の実利に適うと私は思います。“労働者側社労士”は、労働者の実利を最優先するという点において、最適な相談相手なのです。

 

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