特定社労士「労働者代理人」の視点

大阪・梅田で「労働紛争解決(あっせん等裁判外紛争解決手続の労働者側代理など)」「就活」「転職」を支援するリクルートグループ出身の特定社会保険労務士が一筆啓上!すべての「働く人」に役立つ知識と知恵をご紹介します。

『朝まで生テレビ』で見えた稚拙な「労働政策論」。「職業教育」は、いつ、どのセクターが担うのか?

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先週末、久しぶりに『朝まで生テレビ』を見ていると、竹中平蔵宋文洲勝間和代長谷川幸洋らが、全く稚拙な労働政策論を展開していました。

 

彼らの「労働政策論」は、突き詰めれば、労働市場流動性を高めて「労働力」を安く売り買いできる様にし、それによって短期的な利を得られれば良いというものに過ぎません。しかも「職業教育」をどう位置付けるのかという中長期的視点がすっぽり抜け落ちた荒唐無稽なものです。しかしながら始末に悪いのは、労働問題の素人ともいうべき彼らが直接間接に、産業競争力会議等を通じて、安倍政権の労働政策に影響を与えているという点です。

 

議論は様々に脱線していましたけれど、整理すると、彼らの主張は概ね次の3つくらいに集約されるのではないかと思います。

 

①「ホワイトカラー・エグゼンプション」「解雇特区」の拡大・推進の話、

②「非正規雇用」の拡大と「同一労働同一賃金」「総契約社員化」の話、

③「職務型(ジョブ型)雇用管理」と人材流動化促進および外部労働市場拡大の話、

の3つで、「国際競争力を高まる労働政策、グローバルスタンダードな外部労働市場拡大待ったなし」というところが着地点になります。

 

しかし彼らのいう様な労働政策が本当に国際競争力を高めるのかという仮説検証は、実はあまりなされていません。「諸外国がそうだからそれに合わせるのが良いに決まっている」という様な、今のところ薄っぺらで安っぽいグローバリズムからの見解でしかない。また百歩譲って、仮にその仮説が正しいとして、改革というものは、どこから手をつけ、どれくらいのスパンでそれを実行するかという動態的なものとして議論しないと、いたずらに副作用ばかりが大きくなるという思慮が、彼らには全くありません。全く困った「自称有識者」です。

 

確かに将来的には、現状よりも「職務型(ジョブ型)雇用」がある程度広がりを見せるでしょうし、それにつれて「人材流動化」が促進され、「外部労働市場」も大きくなるでしょう。だからと言って、それが一気に進むということは現状考えにくいと思います。『朝生』の竹中、宋、勝間、長谷川らの論調は、その理由を日系大企業(正確には大企業の社員)が終身雇用や年功序列にしがみついているからだという様なところに持って行っていましたけれど、事はそんなに単純な話ではありません。

 

終身雇用や年功序列が崩れていること、幻想になりつつあることは大企業も含めて、日本の企業社会には既に浸透しています。それでも「新卒一括採用」をなくすことはできず、法律で年齢を引き上げられはしても「定年制」を廃止する企業が少数派なのは、「職業教育」が今のところほぼ企業組織内でしかなされておらず、「メンバーシップ型雇用」を止めることができないからです。

 

疑似的にでも終身雇用・年功序列を前提とした「メンバーシップ雇用」を前提にして、「新卒一括採用」でスキルよりもポテンシャルを重視して人材採用し、企業組織内等で育成する以外、「職業教育」を施す場がないというのが日本の現状です。日本の高等教育機関では、医師や看護師、一部のエンジニアといった「職務(職業)」を除いて、職業教育というものはなされていませんし、公共職業訓練機関自体は存在しても、それが社会的に十分機能しているわけではありません。

 

この議論を抜きにして、「職務型(ジョブ型)雇用」「外部労働市場の拡大」「人事流動化」などと唱えても、それは全く意味をなさないというのはご理解頂けるのではないかと思います。今の教育のあり様のまま、「職務型(ジョブ型)雇用」へ移行しようとしたら、おそらくは必要な人材は他企業である程度「スキル」「技術」を身に着けた人材から中途採用するしかなくなります。殆どの大学生は「スキル」「技術」ゼロなわけですから。

 

そして若年層はスキル、技術を身につける機会もなく、年齢を重ねていくことになる。人材流動化とか外部労働市場の拡大どころの話ではありません。

 

ですからこの「職業教育」の問題が大きく変わらない限り、『朝生』で語られていた様な労働改革は、“労働改悪”になりかねないわけです。議論を始めるのであれば、まずは「職業教育システム」からというのがまっとうなアプローチというもの。これは極めて当たり前の労働政策をめぐる理路、労働政策を議論するための作法だと私は思います。

 

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