リコー、「追い出し部屋」問題で事実上敗北。「配転」「出向」の法理とは?
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コピー機大手のリコーが希望退職に応じなかった社員約150名に対して出した出向・配転命令が、昨年一審の地裁で「人事権の濫用により無効」とされ、控訴審でも覆らない見通しとなったため、和解して命令を取り消す方針を固めたというニュースが流れました。異動させた全員を今秋にも元の職場などに戻すとのことです。
一審の地裁判決では、
①経営環境の悪化により人員削減の必要性はあったが、きめ細かに検討していない、
②一律に削減対象人数を算出するなど人選が不透明、
③技術・開発等のデスクワークから出向・配転により立ち仕事や単純作業等の仕事となった、
④出向・配転先では個人のパソコンや机も支給されなかった、
⑤キャリアや年齢への配慮を欠いた出向・配転が行われた、
といった問題点が指摘され、無効となっていました。
今回のケースでは、「配転」「出向」が権利の濫用と認められていますから、不法行為が成立するものとして、損害賠償が認められた判例も過去にはあり、和解に際してはそこも考慮されるのではないかと思います。いずれにせよ、「配転」に関する権利濫用の法理としては、
(1)業務上の必要性が存しない場合、
(2)業務上の必要性が存する場合であっても、他の不当な動機・目的をもってなされたもの、例えば労働者を退職に導く意図でなされたものや、会社批判の中心人物に対してなされたものである場合、
(3)労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合、
の三つの判断の枠組みが学説・判例上確立しています。このいずれにもあたるところがあるのが、今回のリコーのケースであったろうと思われます。
到底勝ち目はありませんから、早期に命令取り消しを含む和解を選択した使用者側の判断は当然と言えるかもしれません。
人手不足業種が拡がる一方、少々の景気回復では、昔のようにすべての企業が業績好調となるわけではありませんし、構造不況業種のリストラも、特定の年齢層に対するこうした配転・出向もなくなることはないでしょう。
今後も労働者側としては、このあたりの理解・整理をして備えておくにこしたことはないと思われます。 個別ケースのご質問等は、お気軽に「労働119番」へ。
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