特定社労士「労働者代理人」の視点

大阪・梅田で「労働紛争解決(あっせん等裁判外紛争解決手続の労働者側代理など)」「就活」「転職」を支援するリクルートグループ出身の特定社会保険労務士が一筆啓上!すべての「働く人」に役立つ知識と知恵をご紹介します。

健康と命を守る「労働時間規制」の行方。ホワイトカラー・エグゼンプションと「過労死」「脳・心臓疾患」労災。

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先日閣議決定した「新たな成長戦略」に盛り込まれた労働時間規制を見直す「ホワイトカラー・エグゼンプション」に関しては、様々に議論されていますが、相変わらずマスメディア大半の反応は「残業代ゼロ法案」という言葉に象徴されるように、「カネ」の話に終始しています。

 

昨年ブラック企業問題が広く一般に認知される様になった象徴的出来事は何だったでしょう?少なくともその一つは、ワタミ新入社員過労自殺の件だったと思いますが、これも「過重労働」が引き起こした事であるわけで、本来であれば、「残業代ゼロ」と同じかそれ以上の重みをもって、「過重労働」の視点からも「ホワイトカラー・エグゼンプション」に鋭いメスを入れるメディアがあっても良さそうなものですが、現状では「刺身のつま」程度に取り上げるメディアがあるだけです。

 

メディアが報道に力を入れない労働時間と「健康」「命」の関係は、大変重要な事ながら、その背景にある法制度や近年の動向についても、当然あまり知られていません。ご存じない方もおられるかもしれませんので改めて申し上げますと、今のところ我が国では、これ以上働いてはならないという、絶対的な「労働時間制限」というものは無いも同然なのです。

 

もちろん法定労働時間はありますが、36協定で協定した時間は法定労働時間を超えて時間外労働をさせることができますし、協定が特別条項付であれば、回数制限はあるものの、月45時間(1年単位の変形労働時間制を採用する場合は月42時間)を超えて時間外労働をさせることもでき、その上限は法律上定められていません。

 

現状これについて不完全ながら歯止めを加えようとしていうのは、以前投稿した「脳・心臓疾患」の労災認定基準と労災補償と表裏一体の労働安全衛生法です。2005年労働安全衛生法の改正により、月100時間を超える時間外労働に対しては医師による面接指導が義務付けられ、事業者は医師の意見を聞いて、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の減少などの措置を講じなければならないことになっています。長時間労働を、「搦め手」の労災要因や安全衛生リスクとして規制する流れは出来ているにもかかわらず、直接長時間労働を物理的に規制する「大手」はいまだ手付かずというのが現状であるわけです。

 

これから労働政策審議会で「ホワイトカラー・エグゼンプション」の詳細を議論し、来年の通常国会への法案提出が行われる見込みと聞きます。年収いくらのどんな職務の労働者を労働時間規制の対象外とするか、ということばかりに財界の関心はあるようです。そんな議論にのみ力を入れているような財界人はきっちりモニタリングされることになるでしょう。そして彼らの関与する企業はきっとこれから採用において手痛いしっぺ返しを受けることになる。

 

一方、労組側なども今回の対象者を「蟻の一穴」として将来的に対象が拡がるのではないかと恐怖するばかりでは、あまりにも芸がない話だろうと思います。この機会を逃さず、厳しい罰則付きの絶対的な「労働時間制限」の法制化をネゴシエーションしていくことは、もはや待ったなしではないか。アメリカはともかく、EUなどの例を見てもそう思わずにはいられません。

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